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『熟れてゆく夏』 藤堂志津子著
「あなたのそのしたたかさ、ほんとほれぼれするわ、
また、あなたが沢井氏にまだ未練があるとしたら、
それは単に性的なこと、あなた自身、きがついてるでしょうけれど。
でも、それは別に彼でなくたっていいいはずよ、あたくしがそれを
実証してあげる。夫人の指先はあっというまに律子の叢へとすべりおちていた。
その指をえて、律子ははじめて自分の体がすでに充分に、いや過剰なくらいに
溶けだしているのを知った。そのときまで分からなかった夫人の仕草は繊細だった。
優美でしめやかで、そしてふいをつく大胆さがあり、律子が小さく叫ぶのを
合図にさっとあとずさる。またそろそろと忍び入ってくる。
その繰り返しのあいだも夫人は律子の耳もとで卑猥でたまならく下品で、
しかもこの上 なくきららかなことばでのあれこれこれを囁きつづけるのだった。」解説より。